自転車女子の覚え書き

自転車ツーリングのことなど

「自転車に乗って」河出書房新社

志賀直哉の「自転車」というエッセイを探しているときに、「自転車に乗って」という本が引っ掛かりました。河出書房新社発行で「アウトドアと文藝」という副題がついています。色々な作家の自転車に関する短編が載っています。志賀直哉の「自転車」も載っていて、神田の自転車屋の萩原(おそらくアルプスですね)も出てきます。

この中で、一つ怖いと思った話があります。角田光代の「これからは歩くのだ」です。こんな話です。

「私」がコンビニの前に自転車を停めて寄りかかっていたら、後ろを歩いて通り過ぎていた老人がバッタリ倒れた。あっという間に人垣ができ、どうしたのかと問う通行人に、老人の横にいた中年女が「私」を指さして「この自転車が猛スピードで走ってきておじいちゃんにぶつかった!」と叫んだ。周りの人や「私」が救急車を呼ぼうかと心配する中、おじいさんはゆっくり起き上がって、救急車は呼ばんでいいと言い、「私」を指さして「この自転車が猛スピードで走ってきて、目の前で急ブレーキをかけた」と言った。中年女はわめいていたが、おじいさんは平気だと言って歩き出し、周りの人もバラバラと去っていった。「私」は押して帰るのも嫌で、自転車に乗る気がしなくなった。

こんな不条理なことがあっていいのかと思いますが、このご時世、他人事じゃない気もします。

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